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2004年から2009年まで更新していたブログ「今週のすぎやん」の内容を抜粋・修正し、ブログには書ききれなかった作者の思いや後日談なども新たに書き下ろしたエッセイ。

2023年10月から2024年4月まで、私が視聴したドラマ【後編】

テレビドラマ レビュー
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後編は、期間中に一番楽しんだドラマ「ブギウギ」について。

どうして朝ドラを見ようと思ったんだろう。

私がずっと幼い頃、朝ドラがまだ8時15分からスタートしていた時代、我が家でも視聴していたように思いますし、今もなお断片的ではありますが、記憶に残っているドラマもあります。
でもいつ頃からか、我が家で朝ドラを視聴する習慣はなくなりました。そして私自身も、朝ドラを視聴しようと思ったことがなかったのです。

最近見た朝ドラは、再放送をたまたま途中から見て好きになり、その後の続編も楽しんだ「ちゅらさん」、有村架純ちゃんファンのダンナが食いついていた「ひよっこ」くらいでしょうか。
大ヒットした「あまちゃん」も、未だにあらすじすら知りません。

だから、なぜ「朝ドラ」に目を向けたのか、自分でも不思議なのです。
自らすすんで、ビデオの予約録画をセットしたことすら、不思議。
趣里さんのファンというわけでもなかったですし。

でもつらつら考えるに、「笠置シヅ子」さんに興味を持ったからかもしれません。

笠置シヅ子さん=「家族そろって歌合戦」。

私が物心ついた頃には、もう笠置さんは歌っていませんでした。
もちろん、代表曲の「東京ブギウギ」「買い物ブギ」などは知っていましたが、それ以外の笠置さんの楽曲や、俳優としての笠置さんについては、全く知りませんでした。

私の記憶に残るのは、視聴者参加型のテレビ番組「家族そろって歌合戦」の審査員席で見せていた、優しい笑顔。それだけです。

昭和9年(1934年)生まれの母は、美空ひばりさんの大ファンだったけれど、笠置さんの歌声もまだ覚えている世代のはず。
でも、歌謡曲全般が大好きで、あらゆる歌番組を欠かさず視聴していた母の口から、笠置さんの名前や楽曲について聞かされた記憶がない。

笠置シヅ子さんって、どんな人だったんだろう。ドラマで取り上げられるほどのことをされた方なのだろうか。
何か面白そうだから、とりあえず見てみるか。ハズレなら、見るのを止めればいいだけだし。そんな軽いノリだったように思います。

めっちゃおもろいやん。

こうして、朝に録画した「ブギウギ」を、夜に見るという生活がスタート。
最初は、2~3日分まとめて見ていたのですが、だんだん面白くなってきて、続きが早く知りたくなり、いつの間にか、放送当日の夜に毎日見るようになりました。

視聴前、「私に15分、時間を下さい!」という、ダンナへの雄叫びと共に。

なんと言っても、大小様々なステージが圧巻。
趣里さんは、かつてバレエをされていたこともあってか、特にダンスに説得力があります。立ち姿が美しいし、ダンス時に体がブレません。とてもステージ映えがして、迫力があり、引き込まれました。

「大空の弟」を熱唱し、ステージ上で泣き崩れるものの、再び立ち上がって歌い出す福来スズ子。
スズ子、そして、梅吉さんが、六郎の死を受け入れるきっかけとなった大事なシーンですが、趣里さんの演技と歌唱は「熱演」という言葉を超越していて、本当に感動しました。

派手さはありませんが、地方巡業中によく歌っていた「アイレ可愛や」、大好きでした。
歌もかわいかったですが、福来スズ子楽団の演奏もよかったです。特に、ほのぼのしたトランペットの音色が、とても印象に残っています。

もちろん、ドラマ前半を彩ったUSKのステージも、華やかで見応えがありました。
特に、大和さんの「置き土産」である、迫力満点のラインダンスは素晴らしかった。出演者・スタッフ全員の地道な努力なしでは、到底実現できないできばえでした。

こういった迫力のあるステージシーンを、自前のホールで撮影できるというのがNHKならでは。
視聴者として、贅沢な時間を頂けました。

ステージシーンと共に、ドラマ内で描かれたのが、スズちゃんの「家族」。

ドラマの始まりの頃の家族、出生の秘密をスズちゃんが知った後の家族、六郎、そしてツヤさんが亡くなった後の梅吉さんとの家族、愛助さん、そして、愛子ちゃんとの家族、そして最終回の家族。
本当は、これが「ブギウギ」というドラマが伝えたかった肝の部分かもしれない。

歌手としての人生を懸命に走り続けながら、スズちゃんはその時々に応じた「家族」を紡いできた。そこに「血縁」など関係ない。
スズちゃんが必要とし、スズちゃんを必要とする人が、共に暮らしているだけ。

辛いこともたくさんあったけど、義理人情が貫かれたブレのないスズちゃんの人生は、潔いです。

スズちゃんを囲む人たちも、魅力あふれる人たちばかりでした。
茨田りつ子さんも、生前の淡谷のり子さんを彷彿させる佇まいがあったし、羽鳥善一さんも、ちょっと狂気じみたところもありつつ、とてもチャーミングだった。
上京したスズちゃんを支えた、下宿屋の夫婦とおでん屋さん。行方が気になっていましたが、ドラマ終盤でお元気だったことが知れ、ホッとしました。

私が特に大好きだったのが、大阪時代の「はな湯」の常連さんたち。
ベテランの役者さん揃いで、お芝居しているのかしていないのか、台本を無視して勝手にしゃべっているのではないか、と思えるくらい、自然な演技ぶりがとても楽しかった。ゴンベエさんが光子さんからプロポーズされているシーンの、常連さんたちの表情、最高だったなあ。

スズちゃんたちが大阪を離れた後の、常連さんたちの物語を、スピンオフとして作ってほしいくらいです。特に「三角関係」、気になってます。

あまりに「ブギウギ」が楽しくて、NHK大阪放送局で開催されたイベントも見に行ったほど。

ブギウギ
ブギウギ
はな湯に掲示されていた貼り紙。ゴンベエさんの似顔絵は、ツヤさんが描いたもの。
ブギウギ
愛助さんとスズちゃんが暮らした家。スズちゃんが洗濯物干しながら、よく歌ってたね。

楽しい半年間をありがとう。

ネットに掲載される「ブギウギ」関連記事をクリックしていると、笠置さんのエピソード記事も表示されるようになり、ドラマとは違う、彼女の波乱の生涯の一端を知ることができました。
おかげで、ドラマをより楽しめるようになりました。

「ブギウギ」は、笠置さんがモデルとはいえ、フィクションです。笠置さんの歩んだ人生が土台になっていて、エピソードが随所に取り入れられていたけれど、史実がそのまま反映されていたわけではない。
あくまで「花田鈴子」「福来スズ子」の物語です。

でも、澤井さんが演じた「花田鈴子」「福来スズ子」も、趣里さんが演じた「花田鈴子」「福来スズ子」も、ツヤさんから教えられた「義理人情の大切さ」を携え、自分に正直に、懸命に生きていた。
もしかしたら、笠置さんも、「花田鈴子」「福来スズ子」と同じような感じの方だったのかもしれない、そう思わせてくれました。

笠置さんのエッセンスを取り入れた福来スズ子は、とても魅力的なキャラクターでした。
福来スズ子として、そして、俳優として、趣里さんがどんどん成長していく様子を、ライブで見せてもらった半年間だったような気がします。

このドラマを通じて、笠置さんって、こんなにたくさんの曲を出されていて、ほぼ全てを服部良一さんが作っていたことを、初めて知りました。
どの楽曲もレベルが高いし、難しい曲も多い。それを、趣里さんが歌いこなしたというのは、本当にすごいことだと思います。それも、福来スズ子としてお芝居しながら、ですからね。
それに、服部良一さんの、尋常ではない楽曲制作数にも、驚くばかりです。

趣里さんは、お芝居と本格的なステージの両方をこなす必要があったので、歴代の朝ドラ主演の方と比較しても、心身共に大変だったと思います。

昨年の紅白出演を期待していたのですが、従来の朝ドラよりもさらに撮影時間がかかるし、紅白用の練習も必要だろうから、無理だったんでしょう。
わかってはいるけど、ちょっと残念だったなあ。

半年間、本当に楽しませてもらいました。
福来スズ子の曲を、何度鼻歌で歌ったことか。

朝の放送が終わると、その日のストーリーがすぐネット記事になります。ドラマの公式インスタにも写真がアップされ、撮影の裏話まで記載されています。
それらを夜までなるべく見ないようにするのが、いかに大変だったか。苦労しましたわ。

楽しい半年間、ありがとう。

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