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2004年から2009年まで更新していたブログ「今週のすぎやん」の内容を抜粋・修正し、ブログには書ききれなかった作者の思いや後日談なども新たに書き下ろしたエッセイ。

2023年10月から2024年4月まで、私が視聴したドラマ【前編】

テレビドラマ レビュー
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昨秋からの半年間、直感的に「見たい」と感じるドラマがたくさんあり、ビデオが大活躍した日々でした。選んだドラマがすべて「当たり」だったのも、うれしかった。
視聴が楽しみなドラマが、短期間に複数あることは、私にとっては本当に珍しいことです。大げさでなく、数十年ぶりかもしれません。全部NHKのドラマだったことには、笑っちゃいましたけど。

あまりの珍現象なので、前後編に分けて、備忘録として残しておきます。

大奥 シーズン2

シーズン1を視聴していたので、制作が発表されて以降、放送開始を楽しみに待っていました。

きらびやかな衣装、豪華なセットだけでも、見る価値あり。
NHKは、こういうところに手を抜かず、本当に丁寧な仕事をしてくれます。出演俳優さんたちも、演技により力が入るでしょうね。

登場人物も見目麗しい人たちばかり。特に天璋院様、実に男前でしたよねえ。お万の方様と同じ福士蒼汰さんが演じられたというのも、ドラマ性があって良いと思いました。

ストーリーも重厚で見応え抜群。やりきれなさを感じる、ドロドロした人間模様の中に、時に微笑ましいシーンも織り交ぜつつ、心打たれる展開に、ぞっとしたり、ドキドキしたり、涙がこぼれそうになったり。
黒木さんの無念の叫び、元気になった徳川家定様を見た阿部正弘様の涙、ドラマ終盤で、和宮様が女性として登場されたのが、心に残ります。

気分が重くなることも多かったですが、「希望」が託された船上のラストシーンのおかげで、明るい気持ちで視聴を終えることができました。

それにつけても、一橋治済様の恐ろしさたるや。
仲間由紀恵さんの怪演の影響で、我が家ではしばらく、「カステラ」に恐怖を感じる日々でございました。

作りたい女と食べたい女 シーズン2

こちらも、シーズン1を楽しく視聴したので、シーズン2制作が発表された時、うれしかったです。

登場人物が少ないので、誰が誰だかわからないということもありません。
みんな言葉遣いが丁寧で、展開もゆったりしているので、セリフがすんなり入ってきます。

どの人も、大なり小なり悩みや心の傷を持っていて、深刻なエピソードも出てくるのですが、決して逃げたり茶化したりせず、みんなが真剣に考え、自分の意見を述べています。
その描かれ方も、とても丁寧。

なんと言っても、野本さんと春日さんの関係性の微笑ましさ。ほっこりします。

基本的に、悪人キャラが登場しないのも、このドラマの特徴です。
ただ今回は、春日さんのお父さんが悪人に近かったのですが、電話口の声だけの出演だったのはよかったです。もし実際に出演があれば、ドラマの雰囲気が壊れてしまっていたかもしれません。

そして、毎回登場する料理が実においしそうで、寝る前に刺激が強い(笑)。
番組内に出てきたロールキャベツ、番組サイトに公開されていたレシピを参考に、後日作っちゃいましたよ。

お別れホスピタル

舞台は、元気になって退院することはほとんどない患者さんばかりが入院している、療養病棟。
いわゆる医療ドラマですが、医師・看護師・患者、それぞれの「生と死」がリアルに描かれていました。

安定した演技力の俳優さんが多くご出演で、安心してドラマの世界感にどっぷりと没入できました。おかしみとかなしみのシーンにメリハリがあって、笑ったり泣いたり忙しかった。
重い内容なので、見終わった後は気持ちが少ししんどくなる時がありました。特に1話の本庄さんの結末は、ちょっとキツかったなあ。

いろいろ考えて、なかなか寝付けなかった夜もありましたが、逃げずに最後まで見るべきドラマだと思えたので、完走しました。とても見応えがあるドラマなので、是非地上波で放送してほしいな。

主演の岸井ゆきのさんは、「大奥 シーズン2」では和宮様役。
どちらの役も、複雑で繊細な感情をきめ細やかに演じられていて、とても印象に残りました。

舟を編む

原作を読了したのは、もうずいぶん前。そのため、今回の主役である岸辺さんが原作に登場していたかどうか、記憶に残っていませんでした。
でも、原作を読んでいなくても、内容を忘れてしまっていても、十分楽しめるドラマでした。

原作とは時代背景が違うため、随所にアレンジが施されていたのですが、馬締さんのオタクっぷりなど、残すべき箇所はそのまま踏襲していて、全く不自然さがない。
もちろん、辞書が出来上がるまでの工程、紙へのこだわり、言葉ひとつひとつ、そして「大渡海」への愛情が、本当に丁寧に描かれています。

「言葉」や「辞書」を通して、岸辺さんが自分の人生に向き合い、傷ついた心を癒やし、良い方向に変化を遂げていく様子は、とても素敵でした。もともと素直な性格だったんだろうけど、あんなに最初は面白くなさそうな顔をしていたのに、ドラマ終盤には見事に辞書作りにハマっている様子には、ちょっと笑ってしまいました。

そして、宮本さんが岸辺さんに告白したシーン。
幼い岸辺さんが、笑顔で大人の岸辺さんの手を取り、宮本さんの手に重ねた時は、ちょっとうるうるしました。「よかったなあ、みどりちゃん」って思えました。

松本先生が病を克服し、未来を語る様子が描かれたのは、時代背景をより現代に近づけたからこそ実現したアレンジですが、人と辞書の未来への希望が感じられて、とてもよい改変だったと思います。
松本先生が、辞書編集部のメンバーひとりひとりに、愛情あふれるねぎらいの言葉をかけるシーンは感動的でした。

松本先生が幼い天童くんを覚えていたこと、ハルガスミさんがうれしそうに「舟」に乗っていたこと、心に残るシーンは、他にもたくさんありました。
コロナを取り上げたのもリアルですし、松本先生や辞書編集部の「大渡海」へのこだわりが、より強く感じられる効果があったと思います。

今回の視聴を機に、原作を再読しましたが、原作を尊重した本当によいドラマだと思いました。
舞台を現代に近づけたのは、「今、この時代だからこそ『言葉』を考えよう」という、制作者の思いや願いが込められているのかもしれません。

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