昨年の話です。
昨年、一大ブームとなった映画「国宝」。
美しくて、華やかで、きらびやかなドラマや映画が大好きなお義母さん(ダンナの母上)は、義父(ダンナの父上)と連れ立って、巷で徐々に話題になり始めた頃に映画館で鑑賞。
それから数ヶ月。
「国宝」鑑賞をきっかけに、歌舞伎を生で見てみたいという欲望が、ふつふつと湧いてきたらしいお義母さん。ネットで検索し、10月に京都の南座で市川團十郎特別公演があるという情報をゲット。席を取ってほしいと、ダンナに司令が下りました。
既にかなりの席が埋まってはいましたが、2人並んで座れる席が、まだ若干残っていました。
さらに、義両親用に確保するつもりだった席の真後ろに、やはり2人並んで座れる席が残っていたのです。
そこで、ダンナのイタズラ心が芽生えます。
「なあ、うちも歌舞伎、見に行かへん?」
南座の前は数え切れないほど通過したことがあるけど、中に入ったことは一度もなかった私たち。
歌舞伎のことはさっぱりわからないけど、知らないことを知るのは楽しい。なんだか面白そう。
加えて、私たちが行くことをナイショにしておいて、現地で驚かせるというサプライズを仕掛けよう。
夫婦で話がまとまり、ダンナは4枚のチケットを入手。
チケット入手後、歌舞伎鑑賞の予習を兼ねて、ダンナと映画館で「国宝」を鑑賞。
ストーリーも何も確認しないまま、ぶっつけで鑑賞したのですが、あっという間の3時間。
メインは確かに歌舞伎で、迫力や美しさが堪能できますが、本筋はどろどろした人間模様、愛と欲と儚さが詰め込まれた、見ごたえのあるリアルな人間ドラマだと思いました。
手間も費用もかかっている、まさに映画でなければできない作品。
ガチの歌舞伎ファンには物足りないかもしれませんが、主演ふたりの俳優さんたちの演技は凄まじいものがありました。他にも多くの仕事を抱えていたはずなのに、彼らはいったいどれだけの努力を重ねたんだろう。
あと、喜久雄が関わった女性たちの生き様。特に、喜久雄から離れて俊介といっしょになった春江の思いに、私の想像が膨らみました。
生意気ですが、こういう大人の日本映画が大ヒットしたことは、とても喜ばしいことだと思えました。
そして10月。公演の日がやってきました。
早め早めに行動する義両親。きっと南座への入場も早いだろうと考え、少しゆっくりめに入場すると、2人は既に着席していたので、そーっと自分たちの席へ。
ダンナは茶目っ気たっぷりに、「歌舞伎は初めてですか?」と背後から2人に問いかけます。お義母さんは「はい、初めてです」と、真面目に返答。
しかし、2人とも、目線を私たちに向けているのに、全く気づきません。ダンナが再度問いかけても、反応が薄い。
ようやっと私たちを認識した時の、2人の驚いた顔と声! 「ああ、びっくりした」と、ずーっと言ってました。
サプライズ大成功、めっちゃ面白かった。
鑑賞した公演は、「歌舞伎の世界」と題されたプログラム。
映画「国宝」でも登場した「二人藤娘」などの歌舞伎の演目はもちろん、お客さんが実際に團十郎さんの衣装を着用したり、團十郎さんが舞台上で化粧や着付けの様子を見せてくれたり、舞台セットが出来上がるまでを見られたりと、歌舞伎初心者でも楽しめるよう工夫されていました。
團十郎さんのおしゃべりが、実に軽妙。
彼が顔にはたくと舞い上がる白粉が、地味に迫力満点。
予習なしでの鑑賞だったので、演目の話の内容はよくわかりませんでした。すみません。
しかし、何より実感したのが、裏方さんの重要性。
三味線や太鼓などの伴奏、様々な用具を使った効果音の迫力は想像以上で、歌舞伎の世界を彩ってくれています。
生の舞台でしか味わえないものだと感じました。
ちょっとびっくりしたのが、黒子さん。
黒子って目立たない存在だと思っていたけど、まさかあんなに目立つ感じで、舞台上でスタンバイしているとは。
團十郎さんが60キロほどある衣装を着用して、きちんとお芝居されている姿は圧巻だったけれど、ひとりでこの衣装を纏うことはできない。
舞台でもコンサートでも何でもそうだけれど、特に歌舞伎は、どんなに花形役者が揃っていても、裏方さんの存在がなければ、幕を上げることすらできないのではないかと思い知りました。
学びも多く、華やかで楽しい気分になれたひとときでした。


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