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2004年から2009年まで更新していたブログ「今週のすぎやん」の内容を抜粋・修正し、ブログには書ききれなかった作者の思いや後日談なども新たに書き下ろしたエッセイ。

唇に錠前。

錠前 旧ブログ・旧HP記事の復刻
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連載45年を過ぎ、コミックスは100巻を超え、アニメ化はもちろん、実写映画化や舞台化もされた、ギャグ漫画の名作である「パタリロ!」。
掲載誌が変わりながらも、45年以上も連載が続く作品は、そう多くありません。すごいことです。

「花とゆめ」での連載が開始された頃、私は「ガラスの仮面」目当ての「花とゆめ」愛読者でしたが、あっという間にパタちゃんのファンになり、毎回作品を楽しみにしていたこと、今でもよく覚えてます。

数多い作品の中で、私の心に残る作品のひとつが、「唇に錠前」。
花とゆめコミックス42巻白泉社文庫・パタリロ!選集24巻に収録されています。

「唇に錠前」のあらすじ

パタリロは、亡き父の法事の席で、目上の親戚に叱られているギイという少年と出会う。
ギイは、パタリロの父親の妹の息子、つまり、パタリロのいとこ。

このギイ、成績優秀・スポーツ万能・容姿端麗と、非の打ち所がない男子だが、口が悪くて一言多いのが欠点。
後先考えず、余計なことをすぐ口走ってしまうため、学校でも嫌われている。

そんなギイに、発明が趣味のパタリロが与えたのが、「逆転ウォッチ」。
竜頭を押すと、時間が30秒逆行する、腕時計型タイムマシンのようなもので、タイムワープが得意なパタリロならではの発明品。

ギイは早速、学校で余計なことを言ってしまうたびに、逆転ウォッチを活用して時間を巻き戻し、人間関係の修復を図るものの、かえってひどい目に遭ってしまう。
好きな女の子には、痴漢扱いされる始末。

そんな折、ギイの母親の依頼で、パタリロがギイの家にやってきた。
ギイがパタリロに文句を言ったことで、それまでの一連の出来事がギイの母親にバレてしまい、自業自得だと一喝される。
そして、パタリロが持参した錠前をギイに手渡す。

その錠前は、パタリロの亡き父が作ったもの。

ギイよりも口が悪く、余計なことを言って人を怒らせていた、パタリロの父。
でもそのたびに落ち込んで、次第に人と話をすることが怖くなり、工作室に閉じこもって錠前ばかり作る日々を送る。
そんな日々の中で、彼は、「人を怒らせるのは、口をきくからだ」と気付き、自分の口に錠をかけてしまった。(もちろん比喩的な意味で)

それ以後、パタリロの父は、めったに喋らなくなったが、人の言うことをよく聞いて、何かを喋るときは、十分に考えてから口にするようになった。
おかげで、晩年の彼は、聞き上手で、発言することに重みのある名君だと言われるようになった。

錠前を通して、ギイにパタリロの父の生き方を感じ取って欲しかった、ギイの母。

感銘を受けたギイは、「口に錠を、話すときにはよく考えて、本当に大事なことだけ」を心がける生き方への挑戦を決心する。
ギイの挑戦を手助けするために、再度逆転ウォッチが使われる・・・。

これ以上、澱を溜めないように。

若い頃は、どちらかといえば、人の話を聞く側に立つことが多かったのですが、年を重ねるにつれ、相手の気持ちを考えないまま、思ったことをふと口に出してしまうことが増えてきました。人の話を最後まで聞かないまま話し始めたり、早合点して誤解したりするときもある。

そのことで、相手に嫌な思いをさせたこともありますし、自分に嫌悪感を抱いてしまったことも多々。

そういう失敗は、自分の心の中に、澱のように溜まっていって、なかなか消えることはない。
二度としないようにと思っても、再度失敗して深く落ち込み、澱の量がさらに増える。

落ち込むたびに思い出すのが、この「唇に錠前」という作品。

思ったことや感じたことを、その場ですぐに話しておかないと忘れてしまうようになったことが、失敗の一因だとは思います。
だけどもしかしたら、若い頃は、ただ聞く「ふり」をしていただけなのかもしれない。
人の話を聞いているようで実は聞いていないという、どうしようもない悪癖を、もともと持っていたのかもしれない。

年を重ねるごとに、人って、それまでの生き方みたいなものがあらわになりますから。

でも、心の中の澱を、少しでも減らせるよう、今私に出来ることは、とにかく「聞く」こと。
きちんと「聞く」ことは、相手に誠実に向かい合うことでもある。

一度口に出した言葉は、元には戻せないのだから。

「唇に錠前」はギャグも満載ですが、私にいろいろなことを教え、反省を促してくれる作品です。

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